HSPと働き方

HSP

「仕事は嫌いではないけれど、どうしても会社に行きたくない」
自分は毎日この感情に支配されて生きていると気付いた時、「HSP」という言葉に出会いました。

1. 「HSP」を知らない人へ

まず、「HSP」を知らない方に、ぜひ「HSP」を知って欲しいなと思っています。「HSP」とは、「Highly Sensitive Person」の略、つまり、「とても敏感な人」という意味です。HSPという概念は、アメリカの心理学者でセラピストのエレイン・アーロンによって1996年に提唱され、人は「とても敏感なタイプ(HSP)」と、「タフなタイプ」の2つに分けることが出来るというものです。世の中のおよそ5人に1人がHSPであると言われています。そして、大切なのは「病気ではない」ということです。

一口に「HSP」と言ってもいろんなタイプの人がいますし、私は専門家でもなんでもないので、このブログでは「HSPとはこうである!」と述べることはしません。私はデンマークの心理療法士であるイルセ・サンが書いた『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』という本を読みました。
鈍感な世界に生きる敏感な人たちHSPの素晴らしい個性と能力や、注意するべき問題点について書かれた、有益な内容となっています。HSPについて理解を深めたい方は、ぜひ読んでいただけば良いかと思います。

ブログでは本の内容ではなく、「HSPと働き方」をテーマに、学生を卒業して「社会人」というものになってからの、自分自身のことについてお話します。自分がHSPであることを自認して、それを自分なりに表現することは、とても良いことだと思っています。そして、ネガティブではなく、ポジティブに。そう捉えることが出来るようになったということが、書いてみようと思った大きな一因です。

2. 転職を5回経て見つけた、自分という人間

「転職5回」が、多いのか少ないのかは分かりません。ですが、「社会人歴が約8年」となれば、多い方なのではないかと思います。私は5回目の転職の時に、「なぜ自分はこんなにも転々としてしまうのか?」と本気で考え、自分自身と向き合いました。長時間労働や休日出勤に耐えられなかった、とか、給料が任せられる仕事の割に安かった、とか、表面的な理由はそれぞれ違うのですが、共通して言えるのが、「仕事そのものは好きだったけれど、会社という場所に馴染めなかった」ということなのだと気付いたのです。

私は会社で「他人の存在」というものを、必要以上に気にしてしまいます。例えば、隣の席の人が立てるキーボードの音や、デスクの引き出しを開け閉めする音によって、です。自分の仕事が忙しくて集中している時でも、他人が立てる物音が感情を持って耳に侵入してきます。「今、イライラしているのかも。私が原因だったらどうしよう」とか、「あぁ、今はノリにノッてるんだな」とか、そんなこと感じたり考えたりしなくても良いのに、どうしてもそうなってしまうのです。

これはデスクだけでなく、会社のトイレでもそうです。オフィスで唯一自分だけの空間になれるのが、トイレの個室です。私はここを訪れると、心からホッとすることが出来ます。ですが、隣の個室に誰かが入っていると、その限りではありません。ドアを閉める音や、トイレットペーパーを巻き取る音が、やはり気になってしまいます。それらが激しいと、「何か嫌なことでもあったのかな」と、自分まで落ち込んで負の感情を抱え込んでしまうのです。

自分がそういう性質を持っているんだと気付くまでは、ただただストレスでしかなく、またそんな自分にもイライラしていました。でも、HSPに出会い、自分自身に対する理解が深まり、認められるようになった後は、「感情を持って聞こえる音たち」に、ネガティブな解釈を持たせるのはやめよう、と思えるようになりました。今もまだ気にしてしまうことはあるのですが、以前に比べて「他人の存在」を恐れずに過ごせていると思います。

また、HSPには花火などの大きな音が苦手な人もいるようです。ですが、私は花火の音からは他人の感情は感じないので、平気です。同じHSPでも、実に様々な人がいます。

3. 自分の居場所は、自分でつくる

もしあなたが、「会社という場所や組織に馴染めない」「違和感やストレスを感じる」と悩んでならば、どうか必要以上に思い詰めたり、自分を責めたりしないで、と思います。単純に転職して環境が変わったら解決する問題かもしれません。

でも、私と同じように転職を何度か繰り返しても、違和感やストレスが消えないならば、やはり「自分の居場所は自分でつくる」しかない、と思います。つまり、「自分にとって心地よく働ける環境を、自分で整える」ということです。

方法は色々とあると思うのですが、私は「自分の出来ること」と「得意なこと」、そして「出来ないこと」と「苦手なこと」を、一緒に働く上司に伝えるようにしています。特に後者は大切です。今までの自分は、何でもかんでも抱え込んでしまい、ある日突然プツンと糸が切れる、ということがありました。「出来ないこと」や「苦手なこと」は、頑張りすぎる必要はないと思います。自分以外に出来る人がいるので、大丈夫です。その代わり、「自分自身の成長に繋がりそう」「勉強になりそう」と思える内容だったら、取り組む価値は大いにあると思います。出来ないことが出来るようになった時は、それは嬉しいものです。

自分自身のことを少しでも誰かに話すと、自分で自分のことを認められるようになります。得意なことも、苦手なことも、全部ひっくるめて「わたし」なのだと。そうすると、他人が立てる物音が感情を持って聞こえてしまう自分も、なんだか愛しく思えてくるのです。

HSPの人は、生きづらそうと思われることが多いです。確かに生きづらいと感じることは多々あります。ですが、「悲哀」や「恐怖」をHSPでない人より敏感に感じるように、「悦楽」や「幸福」もまた、深く強く感じることが出来るのです。美しい自然や絵画を見た時、好きな作家の小説を読んだ時、素晴らしい舞台や映画を観た時、「あぁ、私は今、この世で一番幸せ者だなぁ」と思います。「幸せで心をいっぱいに満たす」そんな生き方をしたいです。


※本記事のアイキャッチ画像は、「Unsplash」を使用しています。

amiko
編集者、デザイナー、宣伝のお仕事などを経験。現在は「デザインライター」として活動中。プログラマーとしてもお仕事をしています。好きなことは、読書、音楽(主にジャズ)、旅行。

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