「明日の食べもの」について考える。

だから、ぼくは農家をスターにする

都会で一人暮らしをしていると、ふと食べることの孤独さを感じる瞬間があります。

この間、久しぶりに某牛丼チェーン店に行きました。ランチタイムで店内は賑わっていましたが、なんと店員さんは一人。接客、調理、配膳、会計、片付け、なんとすべてを一人で行っていたのです。なんとなく申し訳ない気持ちになりながら注文をし、牛丼を食べました。

空腹を満たすには、これで十分。それに、食費が安く済めば助かる一面もあります。
ですが、どこで生産・加工されたか分からない食材、疲弊した表情の店員さん、お金を払ってただ消費しただけの自分、幸せになったのは一体誰だろう。

食べものはモノではない
従業員は機械ではない
消費者は神様ではない

このモヤモヤと孤独感は、自分でなんとかしていかなければ。そんなことを考えながら、お店を後にしました。

◆「消費者」ではなく「当事者」として考える
日本の一次産業について考えたことはありますか?ちょっと話が大きいですね。
自分が今食べているものは誰がつくったもので、これから先食べるものは誰がつくってくれるのでしょうか?

正直私は、今までほとんど考えてこなかったように思います。料理はするようになりましたが、食材は買うもの。産地は多少気にするけれど、生産者は分からない。

『これからもきっと、誰かがつくってくれるのだろう』
でも、そんな未来が保証されていないとしたら。まずは「知る」ことから始めていきたい。

だから、ぼくは農家をスターにする』(高橋博之著)という本を読み、日本の一次産業が抱えている問題点と、これからの在り方について考えることができました。
高橋博之さんは「食べもの付き情報誌」の『東北食べる通信』を創刊した方。詳しくはWEBサイトや書籍を見ていただきたいのですが、とてもシンプルなコンセプトを基にしてデザインされています。

『東北食べる通信』は到着のあと、情報誌を読み、調理し、食べ、学び、出会い、生産者とのコミュニケーションと体験が続く。ふつう、商品は届いて消費された時点で価値がゼロになるのに対し、『東北食べる通信』の場合は届いて食べ終わった時点から価値がさらに広がっているのだ。
私たちが提供しているのは、食の体験サービスであり、食を通じたコミュニケーションサービスなのだ。

このように「食べる通信」は、リアルな情報と食べものをきっかけに、今まで関わることができなかった人たちが繋がり合い、一緒に育てていくことを可能にする。

「消費者」から「当事者」へ。

大きなことではなく、当たり前のこととして、日本の一次産業について考えられるようになるだろうと思いました。

◆デザイナーは「デザイン」という機能ではない
これは、『東北食べる通信』のデザインをされている玉利康延さんの言葉です。彼のモットーは「制作プロセスのはじめから終わりまで関わる」こと。

紙媒体・WEBに関わらず、エディトリアルデザインにおいて、取材・撮影・編集に携わることができているデザイナーは、どのくらいいるでしょうか。恐らくかなり少ないのではないかと思います。

デザイナーは、用意された素材を使ってデザインする。それはまさに、分業化されたモノづくり。食べることに孤独さを感じた、あのときの感情に似ています。

現場に行かないとわからないんです。東京にいると気づかないことに、メディアを通して気づいてもらいたい。僕が『東北食べる通信』でやりたいのは、東北における自然サイクルを見える化することです(玉利康延さん)

食べものの裏側に隠れている生産者の生き様や自然の実像、生命のサイクルを感じられる情報を提供することで、食べものの裏側を可視化する。『東北食べる通信』をそういうメディアにしようと考えた(高橋博之さん)

「食べもの」も「情報(物語)」も、どちらも生きている。生産者もデザイナーも、ただの「つくり手」ではなく、「命を吹き込み育てる仕事」なんだなぁと感じました。

◆「明日の食べもの」は自分でつくる
「食べる通信」との出会いを通して、たくさんの気づきを得ることができました。さぁ、これから自分はどうやって一次産業に関わっていこうか。

1、気になる地域の「食べる通信」を購読する。
2、自分の地元や、今住んでいる地域の農業について調べる。
3、生産現場を見に行く。ブログで発信する。
4、デザインの力で解決できる問題がないか考える。

今思いつく限りでもこんなにある…!特に二番目はすぐに行動できること。
現住所に引っ越す前、神奈川県の大和市に住んでいたのですが、そこには「なないろ畑牧場」というCSA(Community Supported Agriculture)があるのです。(そのことも『だから、ぼくは農家をスターにする』で知りました)当時は全く知らなかったので、今になって、もっと自分が住んでいる地域の食べものについて調べておけば良かった、と後悔しています。

でも、今からでも遅くない。できることから始めよう。

「消費者」から「当事者」、そして高橋さんの言葉を借りるなら「つくり手に寄り添う共感者」へ。未来は他人まかせにせず、自分でつくりながら生きていこう。

amiko
編集者、デザイナー、宣伝のお仕事などを経験。現在は「デザインライター」として活動中。プログラマーとしてもお仕事をしています。好きなことは、読書、音楽(主にジャズ)、旅行。

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