「デザインの仕事」にもいろいろなものがありますが、私は「B to C(Business-to-consumer)」と「C to C(Consumer-to-consumer)」の仕事に惹かれます。
では、なぜ「B to B(Business-to-business)」には魅力を感じないのか。理由は二つあります。
1、誰のためのデザインか
「B to B」の場合、下記のような構造の元で仕事をすることになります。
制作会社にとっての顧客は依頼主の企業ですが、デザインは消費者(生活者)のためのものです。
クライアントと制作会社がお互いを信頼し合い、ある程度対等な関係で仕事をすることができなければ、制作会社はクライアントのために働くようになります。そういう働き方に陥ると、いわゆる「ブラック企業」が生まれやすくなります。
2、何のためのデザインか
「B to B」の場合、自分が本当に良いと思っていない商品やサービスをデザインしなければならないことがあります。
例えば、身体や健康に良いかどうか分からない食料品のパッケージや販促ツールなどをつくるとき、私は「自分自身が中身をよく知らないのに、表面的なデザインだけやっていいのだろうか」と考えてしまいます。「衣・食・住」に関わるデザインをするなら、「大切な人に自信を持っておすすめ出来るもの」だけをやっていきたいのです。
以上から、私は「B to B」以外のデザインの仕事について深めていきたいと思うようになりました。ただ、これはあくまで自分の実体験や哲学を元にした考察なので、「B to B」を否定している訳ではありません。
次は、私の好きなものについてお話です。
B to C:株式会社クラシコム『北欧、暮らしの道具店』
約4年前から愛用しているECサイト。ショッピングだけでなくコンテンツが充実しているので、雑誌のような感覚で読み物としても楽しめます。
また、買い物をすると「リトルプレス」が付いてきます。
これらはすべて社内のエディターとデザイナーの方が編集・デザインをしているそうで、スタッフの方のライフスタイルに関するコラムなども載っています。
また、スタッフの方による商品紹介は「売る側」ではなく「使う側」の視点なので、自社の商品やサービスに愛情を持っていることが伝わってきます。
自分自身が一番のファンになり、仲間(利用者)を増やし、関係性を育てていく。
『北欧、暮らしの道具店』のコンテンツを見ていると、私も使ってみたいなぁ、こんな暮らしをしてみたいなぁと思い、ついつい「お買い物かご」に入れてしまうのでした。
C to C:木賃ハウス主人・サコタデザイン代表 迫田司さん
高知県四万十市に移住し、デザイナーとして活動する迫田さん。
自らを「地(じ)デザイナー」また「百姓デザイナー」と称し、地域のデザインを地域の人と一緒に考えつくりあげる活動をしたり、休耕田を再生させて農薬を一切使わない米づくりを手がけたりするなど、デザインの力を多方面で活かされています。
身の回りにある自然、モノ、ヒトを愛し、それらに愛されるデザインをつくる。
こちらの記事【田舎発「地デザイナー」という考え方】でも、迫田さんの仕事について知ることが出来ます。
高知新聞に連載されたエッセイ『四万十日用百貨店』において、デザインについて下記のように述べられています。
デザインというのは絵柄や形や色だけではない。人とモノ、モノと人、人と人を関係づけるアイディアだ。デザインというとどうしても商業的なイメージが拭えないが、でも私たちの日常の中にもデザインはあちこちに存在している。今夜、大事な友人をどうもてなそうかと考えあぐねることもデザインだし、波風立てぬように、でも一言いっておきたいときにどんな言葉を選ぶかもデザインだ。つまり、相手があって、目的があって、それをハッピーに関係づけるのがデザインというわけだ。
おこがましいかもしれませんが、私も迫田さんと同じようなことを常に考えています。このブログを始めたのも、『デザインの思考や技術を、日々の暮らしや仕事、人間関係に生かしたい』と思ったから。
デザイナーの定義や働き方も多様化している今、改めて「誰のために」「何のために」をしっかりと見つめ、情報発信やデザインの仕事をしていきたいです。