集めて編む暮らし

柳本浩市

私たちは日々、たくさんの情報やモノの中から、自分に必要なものを選択し、吸収し、消費し、生きています。
そのこと自体がすごくクリエイティブなことなのですが、「暮らしの意味」について立ち止まって考えない限り、その創造性やデザイン性になかなか気付くことはできません。


柳本浩市先日、自由が丘のsix factoryにて開催中(6/4まで)の「柳本浩市展“アーキヴィスト ー 柳本さんが残してくれたもの”」に行ってきました。

2016年に46歳の若さでお亡くなりになったデザインディレクターの柳本浩市さん。
アーキヴィスト(確実性のある過去の情報を収集、整理、管理し、それを必要なときに見ることができるようにする専門職)としても知られ、その抽出した情報をもとに、執筆や編集、出版、展示企画、企業のディレクション、アドバイザリーなどの仕事を行い、過去から得た情報を未来へと発展させるために尽力されていたそうです。
柳本浩市本展では、柳本さんのコレクションの数々を見ることができます。世界各国の日用品や食品のパッケージ、文房具、チラシや雑誌のスクラップなど。未整理のものからジャンルごとに細かく分類されたものまでさまざまに。柳本さんご自身が作成された資料ファイルは、実際手に取って閲覧することもできました。柳本浩市大好きなオーレ・エクセルや、ディック・ブルーナにも出会えました。他にも旅先で飲んだことのある飲料のボトルやお菓子のパッケージなどに再び巡り合うことができ、懐かしい気持ちになりました。
どんなに良いデザインだと思っても、最終的に「ゴミ」になってしまうものがほとんどなので、実物のアーカイブはとても珍しく貴重です。

今(も)使っているもの、昔使っていた(捨てた)もの、初めて見るもの、見たことはあるけれど選ばなかったもの、出会ったことはあるけれど記憶にないもの。

『日常において、これらが同時に存在する瞬間は、多分他にはどこにもない』

膨大で多彩なコレクションが放つエネルギーに圧倒されながら、そんなことを考えました。

私たちの毎日は、集めて編むことの連続だ。柳本さんのアーカイブを通して、改めてそう感じました。
情報やモノとの出会いは、これからさらに増えていくことでしょう。「どんな暮らしを送りたいか」「どんな思いを実現したいか」によって編集方針を決め、編集力を磨き、豊かな人生を築いていきたいです。

コレクターの立場で「未整理の収集品」を見ると、一点ではあまり価値がないものを複数個集めて、体系化し解説することにより、価値のあるものに変換しようとしていたのではないかという意図を感じました。またそう考えると「未整理の収集品」の幅の広さにも頷けます。(森岡書店代表・森岡督行さん)

使うために生み出され、やがて捨てられていくモノの消息に柳本さんは何を見ていたのだろう。1人の収集家の直観によって温存された、一見関連性のない物質の間には、生活者の目をすり抜けた未然の価値が隠されているに違いない。日常の何げないモノに秘められた生きるための術を今こそ蘇らせたい。(アーティスト・鈴木康広さん)

関連リンク
YANAGIMOTO Kouichi(柳本浩市) | Web Magazine OPENERS

amiko
編集者、デザイナー、宣伝のお仕事などを経験。現在は「デザインライター」として活動中。プログラマーとしてもお仕事をしています。好きなことは、読書、音楽(主にジャズ)、旅行。

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