「なんでやめたの?」と聞くのはやめよう。

自分の仕事をつくる

『自分の仕事をつくる』
この本に出会ったのは、約2年前のことです。作者は働き方研究家の西村佳哲さん。
先日、西村さんがTwitterでとても興味深いツイートをされていました。

人がなにか始めたとか、やめたとか。人生の道筋をすこし変えたときに「なんでなんで?」と理由訊くひと多い気がする。気持ちはわかるけど、問いとしてクオリティが低い。それは、自分のための質問になっているから。訊ねている本人のための質問、になってしまっているからです。

理由なんてなくていいと思う。生きてゆく場所や相手を条件で選ぶのなら、より好条件の土地や相手を見つけたらそっちへ移るの? 移るんでしょうね。はじめた理由がやめる理由になるわけだ。でも、条件というより、「縁を感じて」始まってしまった関係に、理由らしい理由なんて最初からないわけです。

以前、元IDEEの黒崎さんが「自分が何者なのかはわからないけど、あれは絶対に嫌とか、これじゃないというのは結構わかる。ロックってそういうことでしょ(笑)」とザックリ話していましたが、いやー、そうだな。「ここじゃない」とか「そっちじゃない」ことがわかるのが、まず手がかりだよね。

IDEE(イデー):オリジナルデザインによる家具、インテリアプロダクツの企画、デザイン、製造、販売等を行う企業。
※黒崎輝男:IDEEの設立者。新しい学びの場「自由大学」や、「Farmers Market @UNU」の設立など、さまざまな起業や活動を行っている。

このツイートがストンと腑に落ちた人は、私だけではないはず。

転職活動をすると、必ず「なんで前職をやめたの?」と聞かれます。その理由は、会社の利益を考えているからです。
また、仕事をしていると、「なんでこれをやめて、こっち(のデザイン)を採用したの?」と聞かれることがあります。その理由も、やはり会社の利益のためです。

では、こんなシチュエーションはどうでしょう。
あなたは今働いている会社を辞めて、転職しようか迷っているとします。そんなとき、あなたの友人から「この前仕事やめたんだ!」というメールが届きました。「なんでやめたの?」と聞いてみたくなりませんか?
その理由は、自分が転職するときの参考にしたいから。自分の利益のためです。

このこと自体を悪だと断罪するつもりはありません。
ですが、「自分本意の質問はやめませんか?」と言いたいのです。

「辞める」「別れる」「離れる」

これらの行為は、とても大きな決断で、理由はさまざまです。
それらを話したくないデリケートな問題を抱えている人も多いと思います。また、私が何度か仕事を「辞めた」ときのように、特に深い理由があったというよりも、「ここじゃない」「これじゃない」と、ロジックではない部分で判断する人もいます。
そういう人たちに対して「なんでやめたの?」と自己利益のために聞くことは、粋じゃないなぁと思うのです。

『自分の仕事をつくる』には、黒崎輝男さんのインタビューも載っています。そして、「最終的に何になりたいのか?」という質問にこう答えられています。

それは、常に考え続けるところでして(笑)。いったいぜんたい、自分は何になりたいんだろうと…。でも「何になりたくない」っていうのは、結構わかっていましてね。(中略)何になりたいからなるっていうより、あれは嫌だからこっちだなっていう繰り返しの結果、何かこう追いつめられるようにして、自然に現在に至っている感じ。現在の仕事は、ドロップアウトの延長上にあるんです。

「ロジック」も必要ですが、生き方は「ロック」でいい。

「なんでやめたの?」に代わる、質問する側もされる側も、お互いの財産になるような問いを考えていきたいです。

amiko
編集者、デザイナー、宣伝のお仕事などを経験。現在は「デザインライター」として活動中。プログラマーとしてもお仕事をしています。好きなことは、読書、音楽(主にジャズ)、旅行。

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