「秋分の日」を迎えるまで、夜より昼の時間の方がまだ長いですが、少しずつ夜が長くなり、夏の蒸し暑さも和らぎ、秋の訪れを感じます。
そんな秋にぴったりの、そして私の大好きなモダン・ジャズの名曲を紹介したいと思います。
Bill Evans(ビル・エヴァンス)—『Waltz for Debby(ワルツ・フォー・デビイ)』
これは、1954年にジャズ・ピアニストのエヴァンス(1929-1980)が、当時3歳だった姪っ子のデビイちゃんのために書いた曲。エヴァンスは音楽理論を学んでからジャズを始めたため、クラシック音楽の影響も受けています。(“ジャズ界のショパン”と呼ばれたそうです)
私は大学4年生のとき(2011年)に、この曲に出会いました。繊細で、儚く、美しく、包み込まれるようなメロディは、聴いただけで涙があふれてきてしまうほどでした。
それ以来私は『ワルツ・フォー・デビイ』の虜となり、繰り返し聴き続けています。
※下記のリンクより聴くことができます。ぜひCD等でもお聴きください。
2013年になり、映画『ストックホルムでワルツを』(原題:『Monica Z』)を通して、私の知らなかった新しい『ワルツ・フォー・デビイ』に出会いました。
Monica Zetterlund(モニカ・ゼタールンド)が歌う『Monicas Vals(モニカのワルツ)』です。
モニカ(1937-2005)はスウェーデンを代表するジャズ・シンガー。『ストックホルムでワルツを』では、彼女が一流のシンガーになる夢に向かってひたむきに歩む波瀾万丈な人生が、ジャズの名曲たちと共に描かれています。
※予告編を下記のリンクより見ることができます。興味のある方はぜひDVD等でご覧になってみてください。
本編の中で最も印象的なのが、モニカが自身の母国語のスウェーデン語で歌うジャズです。
「ジャズをスウェーデン語で歌うなんて邪道だ」という批判もあったようですが、彼女は誰かのマネではなく自分自身の気持ちを表現するために、スウェーデン語で歌う道を選びます。
そして、1961年には『Sakta vi gå genom stan(歩いて帰ろう)』がヒットし、1964年に『ワルツ・フォー・デビイ』で夢にまで見たエヴァンスとの共演を果たすのです。
劇中では、歌手のEdda Magnason(エッダ・マグナソン)がモニカを演じ、歌っています。歌だけでなく、喜怒哀楽の豊かな人生を生きたモニカの演技も素晴らしいです。(女優デビュー作とは思えないです)エッダが歌う『モニカのワルツ』は、映画のオリジナルサウンドトラックで聴くことができます。
私は先に映画でモニカで出会ったので、エッダの歌を聴いた後、モニカが歌いエヴァンスが演奏する原曲を聴いてみました。
聴き比べてみると、『エッダ・マグナソンすごい!モニカが乗り移ってる!』と感じます。
優雅で、情感たっぷり。聴き惚れてしまいます。ただ、スウェーデン語の発音や微妙なニュアンスは、モニカの方が出ていて素敵だなぁと思いました。(エッダの方は、たまに英語に聞こえるような感じがあったので、最初は英語圏の女優さんかと思っていました。サウンドトラックに英語の歌も収録されていて、そちらが上手すぎるからかもしれません)
『モニカのワルツ』はスウェーデン語で、こう歌っています。
私のワルツは、シンプルで美しく優しい。私のワルツは、おとぎ話、夢の中の歌
歌詞の通り、夢の中に連れて行ってもらったような、優しく穏やかな気持ちになれます。
夜眠りにつく前に、ロマンチックな気分のときに、心が少し疲れたときに、ぜひ、2人のワルツを聴いてみてください。
◆ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビイ』
◆モニカ・ゼタールンドの『ワルツ・フォー・デビイ』
◆エッダ・マグナソンが歌うモニカの『ワルツ・フォー・デビイ』