ずっとやりたいと思っていたジャズピアノ、ついに始めました。
ジャズの理論を基礎から学び始めて改めて気付く、ジャズという音楽の奥深さ。
『この奥深さの正体は、一体何なんだろう?』
それは、ジャズが「アート」な側面と「デザイン」的な側面の二つの顔を持っているからなのではないかと考えました。
ジャズピアノの話から少し逸れますが、「ジャズ」と「アート」と「デザイン」の関わりを感じる出会いがありました。それは先日、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで『オットー・ネーベル展』を観に行ったときのことです。
オットー・ネーベル(1892-1973)は、スイス、ドイツで活躍した画家。1924年にワイマールに滞在し、バウハウス(ワイマールで生まれたデザインスクール)でワシリー・カンディンスキーやパウル・クレーらと出会い、交友を結んでいます。
本展では、彼が手がけた作品の主要なテーマごとに展示されていました。それは「建築」や「抽象」「演劇」など。
そして、中でも最も印象的だったのが「音楽」でした。
オットー・ネーベル作「ドッピオ・モヴィメント(二倍の速さで)」1936年(※引用元:https://www.atpress.ne.jp/news/137228)
こちらは音楽用語を元につくられた作品です。ぱっと目を引く形と色。近付いて見ると、美しく繊細な“点の描写”も見てとれます。
ネーベルの作品の特徴は、“厳密さを追求”したこと。なんと彼は、自分が残したすべての作品の点の数を把握していたそうです。
それは「形や色の美しさ」だけでなく、彼が学んだバウハウスの教育理念である「形より機能」の影響も受けているからだろうと感じました。
音楽における「機能的なデザイン」と言えば、楽譜が思い浮かびます。楽譜の形にはすべて意味があり、完璧な形(楽譜)をつくれば、正確な音(曲)を奏でることができます。
そのことを踏まえると、ネーベルの作品は楽譜のようでもあります。点や線は、すべて意図して描かれたものであるからです。
ですが、逆に『この作品(楽譜)を見て曲を弾きなさい』と言われたら、初めての人も“二倍の速さで”弾くことができるでしょうか。
つまり、これは「デザイン」されたものであると同時に「アート」でもあり、完璧で正確なものではなく、鑑賞者に委ねられている部分もあるということなのでしょう。
ジャズピアノを始めて、同じようなことを思いました。
ジャズの楽譜は、完璧ではない。
余白の空間がたくさんあり、自分で考え、そこに形や色を加えていかなければいけません。
ですが、でたらめにそれをすればいいのではなく、理論を元に組み立てる力が必要です。
『ジャズの理論は一生もの。マスターすれば、生涯の趣味として楽しめるよ』
先生の言葉を胸に、今はコツコツと学んでいます。(ああ、道のりは長い…!でも、楽しい…!)
それにしても、理論のアウトプットが、こんなにも個性的で、創造的で、芸術的な作品を生み出すことができるのは驚きです。なんとなく、「理論」と聞くと、画一的で退屈なもののように感じるじゃないですか。でも、そんなことはまったくないのだなぁと。
そして、ネーベルのアートからも、ジャズピアニストの奏でる音楽からも、同じような感情が生まれるのです。
『これはデザイン?それともアート?
どっちとは言えないけど、いいものはやっぱりいい!』