インテリアデザインについて勉強するため、2020年12月に発売された本『北欧式インテリア・スタイリングの法則』(日本語翻訳版)を読みました。著者はスウェーデンのデザイナーであるフリーダ・ラムステッド(Frida Ramstedt)氏です。
1. 本のメインコンセプトを捉える
デザインの本やHowTo本を購入する際、あなたは何を重視しますか。私の場合は、その本のメインコンセプト(どのような本で、誰のために書かれたものか)です。そんなこと当たり前だと思う方もいるでしょうが、これを捉えることが一番重要であると考えています。
では、『北欧式インテリア・スタイリングの法則』のメインコンセプトは何なのか。本著の中に、以下のような記述がありました。
- 家具やスタイルの好みに関係なく、誰でも活用できる経験則やヒントを詰め込んだ本
- 他人の家の写真を見てインスピレーションをもらうのではなく、わたし独自のアイディアを生み出すのに役立つ本
- インテリア業界のプロや建築の専門家向けではなく、あくまで一般向けの内容
つまりこの本は、「プロのアイディアをそっくりそのまま真似できる実例集」ではなく、「自らインテリアデザインについて考え、自分好みのスタイリングをするための道標となる本」であるということです。前者を求めている人には、おすすめできないでしょう。私は、誰かの真似をするのではなく、自分にとって最適なインテリアとは何かを理解し、いつかデザインしてみたいと考えているので、ぴったりだと思いました。
2. インテリアは、自分のイメージを構築するための道具ではない
『北欧式インテリア・スタイリングの法則』において、最も力強いメッセージを放っていたのが、第一章の「あなたはどんなことが好きですか?」です。インテリアのスタイリングについて悩んでいる人は、この章だけでも読むべきだと感じました。
著者のフリーダ・ラムステッド氏は、インテリアデザインにおける「ニーズ分析」の重要性を述べ、「SNSなどで自分のプライベート空間を公開すること」によって生じる悪影響について言及しています。
自分の家のインテリアを考えるときは、見た目にこだわるあまり、このニーズ分析を忘れがちです。どのように見せたいかよりも、日常でどのように機能してほしいかを考えてみましょう。(中略)
(SNSなどで自分のプライベート空間を公開することについて)これまで服やファッションがその役割を果たしてきたように、家をどのようにスタイリングするかで、自分のイメージを構築していくのです。でも、そんなアプローチはすぐに虚しくなるし、お互いに自慢し合っているだけ。それでは快適さや居心地のよさは手に入りません。
これはつまり、SNSで自分のインテリアをシェアしたり、他人がシェアしたものを見て参考にすることの全てが悪いというのではなく、それが目的になってはいけない、ということです。私はとても納得しました。また、「インテリアは、自分のイメージを構築するための道具ではない」というこの教えは、人生論にも繋がるなぁと思いました。
3. 「ニーズ分析」をするための問い
デザインにおいて重要な「ニーズ分析」をするための問いについて、本著では下記のように述べられています。
あなたの性格と、家でどのように過ごしたいか。それに基づいて、住まいを最適化してみましょう。あなたがいちばん好きなのは、いつ、何をしているときですか?分析することで、その時間を増やせるようにしてみましょう。
例えば、自分自身を例に考えてみます。私にとって外の世界は、「刺激を受ける場所」です。心地良い刺激もあれば不快な刺激もあり、後者を受けた時にストレスを感じます。一方、家(内の世界)は、「リラックスする場所」であり、外で感じたストレスを癒す場所でもあります。
したがって、自分自身がリラックス出来る空間に「住まいを最適化」すればいいということです。例えば、暖炉がある空間、快適な椅子に座って読書や音楽を楽しめる空間、好きな絵画を鑑賞出来る空間、などです。
イギリスの有名デザイナーであるテレンス・コンラン(1931-2020)氏は、下記の言葉を残されているそうです。
自分が何を好きなのか、それを他人から学ぶことはできない。
デザインの出発点は、「自分自身への問い」なのだろうと思います。
4. 「WABI SABI」と「赤い糸」
最後に、『北欧式インテリア・スタイリングの法則』の中で、私が興味を持った解説について紹介したいと思います。
「わび・さび」を取り入れる
まず、スウェーデン人が書かれたインテリアデザインの本で、日本の美意識である「わび・さび」の話が出てくるのがとても興味深かったです。
「わび・さび」は日本の美とインテリアのコンセプトで、ありのままの中に美しさを見出すこと。完璧でないものを賛美し、生まれてから朽ちるまでの循環に美しさを感じるのです。
「わび・さび」の美意識には、私もとても共感します。例えば、自分が住むことを考えたときに、全て真っ新なインテリアに囲まれていたとすると、少し窮屈に感じるでしょう。また、「キレイなものを汚したくない」という意識が働き、神経質になってストレスを抱えることもありそうです。
一方、新しいインテリアの中に一つ、時代の変遷を感じるようなアンティーク家具があったとすると、窮屈感が和らいで、温かみを感じ、リラックス出来る空間になりそうです。個人的には「全て新品や最新式」「全てアンティーク」ではなく、基本をモダンなデザインでまとめて、ポイントとなる箇所に愛着を感じるアンティークのものを設えた空間に惹かれます。
一貫したテーマ(赤い糸)を持つ
本著の中で、「赤い糸」という小見出しが登場した時、最初は何のことだろうと思いました。説明は下記の通りです。
ギリシャ神話では、英雄テセウスがアリアドネーからもらった「赤い糸」をたぐってミノタウロスの迷宮から脱出しました。いまでもスウェーデン語では、スピーチや議論の途中で話題がずれてしまったときに「糸を落とした」と表現します。逆に、インテリアデザイナーやスタイリストは家じゅうに糸を引いて回っているようなもの。決めておいたテーマを浸透させ、部屋やフロア全体にまとまりをつくるためです。
「赤い糸」が「テーマの一貫性」という意味を持ち、デザインやスタイリングに使われていることを初めて知りました。
「家じゅうに糸を引いて回る」は、抽象的な表現なのでイメージがしづらいですが、「家じゅうのインテリアに何かしらの繋がりを持たせる」ということだと思います。分かりやすい一例が、同じ要素(色、形、質感、ディティール等)を繰り返し用いることです。ただ、「繰り返し」の表現は、整い過ぎていてつまらない、と感じる人もいるかもしれませんね。
書籍の中では「繰り返し」以外にも、インテリアにテーマの一貫性を持たせる方法について書かれています。まるで物語を考えるようでとても面白いので、気になる方はチェックしてみてください。
デザインの本やHowTo本が役に立つか立たないかは、実践する時に初めて分かります。私は今すぐにインテリアを自分でスタイリングする機会がないため、まだ分かりません。しかし、「実践したいと思わせる」内容にまとめられていると感じました。少なくとも「自分にはセンスがないから無理」「素人だから無理」ということは、絶対にないのだと思えるはずです。
【参考サイト】
・フィルムアート社「北欧式インテリア・スタイリングの法則」
・フリーダ・ラムステッド氏が運営するサイト「Trendenser」
・BBC NEWS「サー・テレンス・コンランが88歳で死去 生活デザインの変革者」
※本文中の画像は、「Unsplash」を使用しています。