先日、人生で初めて「マーダーミステリー」で遊びました。ジャズのセッションにも似ているところがあるマーダーミステリー。「人と協力して物語を紡ぐことの楽しさと難しさ」について考えたいと思います。
マーダーミステリーとの出会い
私がマーダーミステリー(以下:マダミス)と出会ったのは、YouTubeの動画がきっかけでした。YouTubeでマダミスを配信されている方の動画を見て、一緒に推理したり、ストーリーに感動したり、という体験がとても楽しかったことから、マダミスという文化に興味を持ちました。
何本かマダミスの動画を見て、「とりえもすたぶ」というマダミスを制作しているサークルの『宇宙船ニル・ノート号の残響』という作品に出会いました。そして、その世界観とシナリオに感動し、初めて自分で実際にプレイしてみたい、と思いました。
マダミスは「一度シナリオを知ってしまうと二度とプレイできないゲーム」なので、内容を話すことはできません。また、YouTubeでも配信者の方がプレイした動画を見ることができますが、機会がありましたらご自身でプレイされることをおすすめします。
実際にプレイされたり、動画を見られたりしてマダミスを楽しまれた後は、ぜひ上記のイメージサウンドトラックを聴いてみて欲しいです。フリーBGMなのですが、ストーリーに合っていてとてもセンスが良く、また、聴きながら登場人物たちの人生に思いを馳せることで、二度三度と感動を味わうことができます。
初めて遊んだマーダーミステリー
「とりえもすたぶ」さんの作品をプレイしてみたい!と思い、『夢ノ棺ノ時間ドロボウ』という作品をプレイする機会を得ることができました。自分にとって初めてのマダミスです。「CCFOLIA」というツールを使い、Discord等オンラインで通話をしながらプレイすることが可能です。直接会って話すタイプのものよりハードルが低いので、初心者でも楽しめると思います。
実際にプレイした感想をネタバレなしでお話すると、「楽しかった!」「感動した!」「難しい部分があった!」という語彙力の低いものになってしまうのですが、「難しさ」について少し掘り下げてみたいと思います。
まず、『夢ノ棺ノ時間ドロボウ』は、4人のプレイヤー(以下:PL)とゲームマスターで行います。PLは上記の4人のキャラクター(少年少女)の中からそれぞれ一人を選び、そのキャラクターになりきってプレイします。私は右下の「常闇一夜くん」を選び、4人で相談して決めました。
常闇一夜くんがどのようなキャラクターなのかについては言及しませんが、自分と似ている部分もあれば、似ていない部分もあり、さらに性別が異なる男の子ということで、自分にとっては複雑な立ち回りが求められました。
出来るだけ自分がプレイするキャラクターの性格や心情に寄り添いながらロールプレイをする。それは初めての体験でした。とても緊張しましたし、他の3人のキャラクターのことも考えなければいけないので、神経も使います。初めてジャズのセッションで、人前でプレイした時のことを思い出しました。
ジャズのセッションとマーダーミステリー
マダミスは、ジャズのセッションに似ていると思います。それぞれに役割があって、その役割を全うしながらも、力を合わせて一つの音楽(物語)を作り上げていく。そして、決まったメロディ(シナリオ)はあるけれど、その日その場所に集まったPL同士で、その作品にアドリブで味や深みを加えていく。これが面白さであり、難しさでもあると思いました。
「ジャズに名曲はないが、名演奏はある」という言葉をよく耳にします。「名曲はない」というのは同意しかねるのですが、この言葉の伝えたいことはよく分かります。ジャズというのは、演奏によってまったく異なる音楽になるからです。
マダミスも、それに近いものを感じています。まず、PLの選択によってエンディングの分岐がありますし、キャラクターや作品から感じ取れる印象や余韻も、ロールプレイによって大きく変わるからです。その場の空気感やコンディションに左右されることもありますし、本当に最後まで何が起こるかは分かりません。
ただ、ジャズのセッションとマダミスには異なるところもあります。それは、「マダミスには間違いがない」ということです。ジャズはある程度の知識やスキルがないと、実際にプレイすることは困難だと思います。そのため、PLがミスをすることもあります。ですが、マダミスは何も知らない状態で楽しむゲームです。そして、あなたが「間違った選択をしてしまった」と思っても「間違い」などはなく、どんな結末を迎えたとしても、あなたが愛すべき一つの物語なのです。
初めてのマダミス体験は、人生を豊かにしてくれるかけがえのない時間となりました。また機会がありましたら、別の作品も遊んでみたいと思います。そして、『宇宙船ニル・ノート号の残響』と『夢ノ棺ノ時間ドロボウ』は本当に素敵な作品なので、ぜひたくさんの人に楽しんで欲しいと思っています。
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