北欧が好きで、北欧に関するリトルプレスを集めているのですが、最近新しい一冊を手に入れました。作り手視点でも学びがあったので、主に「作り方」のポイントを掘り下げて、リトルプレスのご紹介したいと思います。
1. リトルプレスのテーマとタイトルを決める
新しく手に入れた一冊は、北欧についての取材・執筆活動をされている森百合子さん(→北欧BOOK)が制作された『Psi-Psi(プシプシ)』です。“プシプシは北欧をテーマにした雑誌のようなzine”だそうですが、「zine」は、リトルプレスと同じく少部数の出版物を意味します。
以前書いた「リトルプレスのつくり方」という記事で、リトルプレスとzineについての説明をしました。そこでzineについて、“写真・アート・イラストがメインで、日本語が少ない(もしくは英語で書かれている)”と書いたのですが、『Psi-Psi(プシプシ)』は読み物系の記事が充実していますし、あまりリトルプレスとzineの違いについて考える必要はないと思っています。
また、気になる『Psi-Psi(プシプシ)』というタイトルについてですが、本書内で下記のように説明されていました。
プシプシとはギリシャ語で猫をよぶ時の音。ムーミンの作者として知られるフィンランドの作家トーベ・ヤンソンは愛猫にプシプシーナという名前をつけていました。
(中略)
猫との距離を縮めるように、そろりそろり、ゆっくりじわじわと。北欧の「ここが好き!」を掘り下げていこうと思います。
脱力感のあるかわいらしい言葉の響きと、作り手が考えるテーマがぴったりハマったタイトルだと思いました。“テーマに合ったオリジナリティ溢れるタイトルを考えること”は、リトルプレス作りにおいて重要な工程です。
2. 特集を考え、自らこしらえる
リトルプレスをつくる上で一番大切なことは、“自らこしらえること”なのではないかと思っています。例えば、書店等に流通している一般的な雑誌は、たくさんの人の手によって作られています。つまり、編集者、取材者、ライター、フォトグラファー、イラストレーター、デザイナー等、作業が全て分業されているということです。
しかし、リトルプレスの面白さや魅力は、“分業されたプロの仕事の結集”ではなく、“作り手の思いや個性がダイレクトに反映されていること”だと考えます。文章、写真、イラスト、デザインを、一人もしくは少数の人間によってこしらえることで、それは叶えられるでしょう。
リトルプレスの制作は、すべて分業にするのではなく、自分で出来ることややりたいこと、得意なことはなるべく自分が行い、それ以外は賛同して協力してくれる人にお任せするのが良いと思います。(すべて一人でやることも出来ますが、とても大変です。)『Psi-Psi(プシプシ)』は、執筆とイラストを作者の森百合子さんが行っていて、それ以外は別の方が担当されているようです。
また、前章ではリトルプレス自体のタイトルの重要性について書きましたが、特集のタイトルもとても大事です。『Psi-Psi(プシプシ)』の中には、「シナモンロールを求めて、北欧ミステリの町へ」というタイトルの特集エッセイがありました。このタイトル、なんだか惹かれませんか?
まず、美味しいもの好きな自分は、シナモンロールというワードにビビッときます(笑)そして、「北欧ミステリ」ってなんだろう?と、興味がふつふつと湧いてきます。この「食」と「旅」を組み合わせて、もっと知りたいと思わせるタイトル、北欧など特定の地域をテーマにしたリトルプレスにおいて、テッパンなのではないかと思います。
3. 雑学的要素のあるコラムを考える
リトルプレスの作り方のポイントで最後に取り上げたいのが、「雑学的要素のあるコラム」です。例えば、特定の地域をテーマにしたリトルプレスにおいては、旅に関する特集がメインになると思うのですが、旅の話を最初から最後まで同じテンションでするのではなく、途中もしくは最後に息抜きとなるようなコラムを入れると、読者が飽きずに読み進めることが出来ると思います。
『Psi-Psi(プシプシ)』では、タイトル由来にもなっている“猫を呼ぶときの音”から派生して、「猫とお近づきになるための言葉」についてのコラムや、北欧の映画や音楽についてのコラムがありました。テーマと全く関係のないものではなく、関連性があるネタを探して取り入れるのが良いと思います。
ちなみに、北欧映画のコラムは、自分の好きな映画の一つでもある『ストックホルムでワルツを』についてのお話でした。以前ブログでも少し書いています。(→2人の「Waltz For Debby」)スウェーデンやジャズに興味がある人にはおすすめの作品です。
リトルプレスの作り方について、3つのポイントを自分なりに掘り下げてご紹介しました。改めて、リトルプレスは奥が深くて面白い文化だなと思います。
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